遺伝的情報を用いた森林管理

2019年7月5日

はじめに

 日本の森林は約2500万haでそのうち1300万haが天然性林約1000万haが人工林その他が竹林などで構成されています。この森林を管理していく上で、遺伝的情報があるということは、健全な森林の保持、効率的で生産性の高い林業を行う上でとても重要になってくると考えられます。

遺伝的情報を用いると

 森林の管理において、多型性の高いマイクロサテライトマーカーが数十遺伝子座あれば、遺伝子流動研究や系統地理学的研究ができます。このような多型性の高いマイクロサテライトマーカーを用いることによって森林内で起こっている交配を可視化することができます。他殖率や花粉流動の範囲が特定できるので、母樹密度や花粉媒介者の違いによって他殖率や花粉流動がどのように変化するか調べることができます。これらの調査を行うことで特定の森林が将来、遺伝的劣化を引き起こすかどうかが分かります。このような方法で、遺伝的情報を用いて、森林を管理することで、森林の将来像が見えてきます。森林の将来像を見ることができれば、その将来像に対して、どのように対処していけばいいのかということがわかります。

東南アジアを例に挙げて

 例えば、商業的利用や住宅地開発、農地開発のための森林伐採に対する対策として、持続的林業管理を目指している東南アジアの熱帯林などで、以上のような調査を行なって、将来像を知ることができれば、それに応じた対策を考えることができます。

他家受粉の割合低下の対策

 もし、その地域での調査により、他家受粉の割合が小さくなっていたとすれば、それを解決することを目指せば良いです。花粉媒介者の数を増やすような仕組みを作ることができるのではないかと考えられます。私の専門が、圃場ですので、特に農地開発のために、森林を伐採していたり、焼畑農業を行なっていいたりする場合について考えます。そういった圃場で近年問題になっているのは、農薬の使用です。農薬の使用が送粉者の数を減らすという負の貢献をしてしまっているのです。そのため、まずは、その森林の周辺で農業を営んでいる農家の方々に対して、農薬を減らす農法を教えてあげるという対策が可能となると考えられます。これはほんの一例ですが、このようにして送粉者の数が減らないような対策を講じることができれば、他家受粉の割合を保つことができます。この他家受粉の割合を保つことができれば、近郊弱勢を防ぐことにつながり、生態系の維持にひと役買うことができます。

花粉流動の変化

 もう一つ、遺伝的情報を用いた調査により、花粉流動がどう変化するかについても調べることができます。この花粉流動について、知ることができれば、森林管理において、どこにどのような種の木を植えれば、遺伝的多様性が最小限の労力で、遺伝的多様性を保つことができるのかということがわかります。もし、この遺伝的情報による調査が可能でなかったとすると、より面倒な実験によってどこにどのような種の木を植えればいいのかということについて考えなくてはならないと思います。とても大変な作業であると考えられますし、費用的な面でも、特に先ほど例に挙げた東南アジアの地域はそのような研究に十分に回せるお金がなく、不可能に近いと考えられます。だからこそ、近年の遺伝的情報による森林管理の進歩は、持続可能な森林管理といった部門において大きな利益をもたらすのではないかと考えています。

コアレッセンシュミレーション

 上記では、遺伝的情報による他殖率と花粉流動の調査の有効性について考えましたが、そのほかにも遺伝的情報によってわかることはたくさん存在します。ひとつ気になったのは、コアレッセンシュミレーションという方法です。日本には天然分布域が広域な種がおおくあり、歴史的な気候変動とともにその分布を変遷させています。遺伝的に見ると同種であっても集団ごとに遺伝的組成が少しずつ異なります。長い年月の間にその種内で異なる遺伝的系統ができるということが起こります。こういった遺伝的系統の分岐年代をコアレッセンシュミレーションによって推定することができます。このようにして、遺伝的系統の分岐年代を知ることも、森林管理において必要なことだと考えられます。それがわかると、その遺伝子が気候条件などのどういった地理条件に強いのかということが推定でき、遺伝子組み換えなどに応用でき流と考えられます。

まとめ

 以上のように、遺伝的情報を用いた森林管理は、その最適化に貢献し、より正確で、素早く、安価な方法を確立できることは間違えないと考えられます。